SCAPAのロングシップはどこへ消えた?!

グレートブリテン島の北東沖合い、北海と大西洋の境界に位置するオークニー島にあるSCAPA蒸留所、その伝説の8年モノが手の届かないビンテージものになって久しい。

あのラベルに描かれたノスタルジックなヴァイキングの舟(戦闘舟はロングシップというらしい)と”SCAPA”の卓越したロゴが本家のラベルから消えていかほど経つか・・・。そもそも、”SCAPA”は古ノルド語でボートを現わすという。

スキャパ蒸留所は1994年から2004年まで閉鎖されていた。しかし、その間にも近くのハイランドパークの職人たちが出向き、少量を作っていたという。

ハイランドパークの蒸留所と並んで、SCAPAがあるオークニー島は、フランケンシュタイン博士がかの有名なモンスターをつくった島と同じ列島にある。

30分の間に四季が訪れる…と言われる、このほとんど樹木の生えていない荒涼としたOrkneysは、氷のような北大西洋の遠隔地にもかかわらず何千年ものいにしえから人が住んでいる。5000年前の新石器時代の遺跡が、12世紀のバイキングの墓や彫刻とともに本島に点在しているのだ。漁師、商人、探検家、そしてロイヤルネービーも、嵐に襲われたこの海かすめて通り抜けてきた。

それは間違いなく我々に独特のインスパイアーを与える。

そこに住む人々は、母音と子音の間に何かを含んでいるような微妙な古代ノルド語がアクセントになっている。

このOrcadian(バイキングの末裔と称するオークニー島の住民)のアクセントのように、スコットランド北部のウィスキー蒸留所は変化が遅く、それはとても良いことだと思える。

スコッチウィスキー蒸留所で現存している唯一の樽型のロ-モンドウォッシュスティルについて言及するなら、このオールドスタイルのクラフトマンシップは結果として実に独特な、味わい深いものを創り出しつづけている。

今日、スコットランドの蒸留所が地理的に違っているにも関わらず、ウィスキーはお互いに類似したものになり始めている。

この文化的均質化の一部は、大企業が相互に取引をおこない、技術を標準化することによるが、その一部は、特にインターネット上で、簡単にコミュニケーションをとる方法ですら行われている。ウィスキーの世界でScapaのような頑固な古い先祖返りのようなウィスキーをサンプリングするのは実に爽やかだ。

同じようにエキセントリックなもう一つの蒸留所はEdradourである。この奇抜で小規模なオペレーションにより、一対のウォッシュスティルとスピリッツスティルだけで、いまだに独特の味わいのシングルモルトスコッチウィスキーを作り出していることは称賛に値する。

不思議なことにScapaはピートで乾燥した麦芽を使用していないし、また「地面からのブラウン」を避けるためにパイプを通して水を引いているにもかかわらず、仕込み水にはいくらかOrcadianピートの味が潜んでいる。(2016年”Scapa Glansa”はピィーティなExウィスキーカスク仕上げ)

シェイクスピア的言いまわしでいうなら

“すべての公平な観点から、この魅力的で奇妙な”錬金薬”を作るために、ピート豊かなこの地の古きもの達からの恩返しとして、ささやかなピートたちがウォッシュスティルに忍び込んだ、ということだよ” と。

現時点Scapaは16年もののリリースをやめた後、スタンダードなエイジドレンジでの販売はされていない。

Gordon & MacPhailでは「ニューコニサーズチョイス」「ディスカバリー」に続き、今回「蒸留所ラベル」が変更された。内容等に変更はない。

GM社は数多くのボトラー(独立瓶詰業者)とは異なり、原酒を樽の状態で仕入れることはなく、自前で用意した樽で原酒を仕入れるという手法に従っている。1930年代のマッカランもそうであり、G&Mのディレクターの手腕がすべてを差配し、その生み出されたスピリッツは本家を凌ぐものがあまた存在する。

このGordon&MacPhail社の「蒸留所ラベルシリーズ」 2005年蒸留のSCAPAのボトルにはオフィシャルから消えてしまったあのロングシップが昔と同じように描かれている。実にうれしい。

このことがは長年にわたるG&MとSCAPAのみならず多くの蒸留所との密接な関係を物語っており、それこそがG&Mの真価だと考えられる。今日のピィーティーさを売り物にしたものや、マッカランのジェントルさ?と比べることも無意味なほどに ”実にさりげないスコッチ” の蒸留所ラベル2005年~2018年 13年モノ。